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2019 07/12

広島・独立リーグで日々奮闘~二岡智宏監督が流した涙(下)



 今季から独立リーグのBC富山で指揮を執る、二岡智宏監督(43)がシーズン前期を終えた。選手たちが夢見るNPBドラフトは10月。残り3か月となった今季、指揮官としてどう選手に接するべきなのか-。その思いに迫った。(取材・高田 健介)

 首脳陣は自身を含め、3人だけ。意見がぶつかることもある。「もっと人が多ければ」と思っても、一足飛びに変わるわけではない。それなら、その厳しい状況を逆手に取って、選手育成につなげればいい。試合前の打撃練習では、ほとんどの選手にボールを投げ込む。選手による得意、苦手コースや、変化球への対応力などをすべて把握して、投げるボールを変えている。

 「俺の中で一番気を使っている部分。みんな打ち方が違う。どうやったらいい感じで打てるか。この選手には緩いボールを投げようとか、そういうのは俺の頭に全部入っている。全員に同じ教え方をしても成長はできないから」



 粘り強い指導に、選手たちも必死で食らいついた。昨年、打率1割台だったつよし(藤原強史)内野手、2割台だった林崎龍也捕手、金子将太外野手も3割を越えるまでに成長した。

 技術だけでない、精神的な成長も見込まれなければ、さらに上のレベルに行ったときに苦労する。時には、厳しく諭すことも必要だ。優勝がなくなって迎えた前期最終戦で、走者が指揮官の出すサインを見ていなかった。試合後にどんなサインだったかを聞くと、見ていたかのような発言をしたことを指摘した。



 「違うだろ、と。サインを見てませんでした、だろ、と。そういう意識じゃ、もっと高い所でチームとして動けない。サインが分からなければ確認する。もし、ミスをしたなら素直に認める。野球の技術だけじゃないこともこの先、絶対に必要になる」

 選手時代、試合中にグラウンドで笑うことはなかった。戦いの場に身を置けば、勝つか負けるかしかない。NPBを目指して必死になれば、笑ってなんていられない。だから、自軍の選手の心の乱れには厳しかった。5月24日の福井戦で、つよしがサヨナラ打を放った。続く26日も福井戦。昨年途中まで福井の練習生だったつよしが打席に入ると、冷やかしにも似た声が飛んだ。恥ずかしさなのか、笑いながら打席に入って凡退。その日、活躍できなかった前日のヒーローに指揮官はこう、投げかけた。



 「前の日にいくら活躍しても切り替えられず、さらに相手に笑って反応して乱される。そういう気持ちの選手はうちにはいらない。移籍先は探すから、他でやってくれ。1日考えて、結論を出してくれ」
 
 翌日、「このチームでやりたいです」と返事が返ってきた。目の色が変わった瞬間だった。選手によってきっかけは違う。ただ、トップに立つ人間として、各自の「隙」を見逃さないのも大切なことなのだ。

 「残り3か月」の後期が始まった。前期終了後、選手には打席での考え方の変化を提案した。



 「みんな、初球からツーストライクに追い込まれたような窮屈な打撃になっていた。ファーストストライクは自分で絞ってフルスイングしよう、と。ツーストライクに追い込まれたら、今までのようなスイングでいいと思う。ある程度やってみて、スイングを崩すようならやめようという話もした」
 
 開幕当初にはできなかった、チームとしての打撃方針まで徹底できるようになった。これも選手が成長したからこそだろう。

 「開幕のころは82キロだった体重が75キロになった。ユニホームもだいぶ、ゆるくなっちゃって。今は色々な意味で難しさを感じている。試合を進める上での監督としてではなく、選手をどうしたらもっと高いレベルに押し上げられるか、とかそういう難しさを感じている。ただ、頑張ってる選手と、泣いてくれるくらい熱いものを持った選手がいるから、俺も頑張れる」
 
 前期は2位だったが、今の職にしがみつこうという気持ちはこれっぽちもない。選手同様「残り3か月」は二岡監督も同じ。チームスローガンでもある「輝」を選手たちが放ち続けられるよう、勝負の秋に向けて走り続ける。

 <二岡智宏>(におか・ともひろ)1976年4月29日、広島県生まれ。43歳。広陵高、近大を経て、逆指名した巨人に98年ドラフト2位で入団。1年目から正遊撃手として活躍。2002年に日本シリーズMVP、03年にベストナイン。08年オフに日本ハムへ移籍し13年限りで現役引退。15年オフに巨人2軍打撃コーチに就任し、17年から1軍打撃コーチ。昨オフに退団。通算成績は1457試合で1314安打、打率2割8分2厘、173本塁打、622打点。180センチ、80キロ。右投右打。
 ◇富山GRNサンダーバーズ 2006年11月に創立し、07年のリーグ創設時から参戦。15年には元巨人のタフィ・ローズ外野手が加入して話題を集めた。資本金9325万円で、地元の企業、個人など約70の株主が支える。昨年は、今季から楽天の1軍投手チーフコーチとなった伊藤智仁氏が監督を務めていた。




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